2020/11/08 19:42

女性アイドルグループの衣装を終えた後も、男性俳優のCMの衣装制作や、

また別のアイドルグループの衣装制作などに携わり、その一年は東京で衣装を作成して過ごしていた。

次の年になると衣装の案件もぱったりと落ち着き、

再び師匠の家に下宿する日々に戻っていた。

毎日落ちていく夕日。

その夕日を一人師匠の家から見ている。

前の年に東京にいて衣装の仕事を経験した私は、この毎日落ちていく夕日を眺める

ゆったりとした時間に徐々に耐えられなくなっていた。

当時、師匠の家に出入りしていた業者さんが私の相談相手で、

モヤモヤした気持ちをぶつけていた。

日に日に、「ここで何してるんだろ。」と思うようになった。

衣装という、自分が情熱を持ってやれることをようやく見つけたのに、

師匠の家にいなければならないということに耐えきれなくなり、私は決心したのだった。

朝、師匠が起きてきてから、「お話があります」と言った。

そして、「辞めさせて下さい。」とお願いをした。

ぶん殴られるかな、と思ったが、師匠はきちんと話を聞いてくれた。

「やらせて頂いた衣装や服作りをして生きていきたいと決めたので、辞めさせて下さい。」

心臓バクバクの中、誠心誠意を持って言葉にした。

「そうか。わかった。」

「それがいいよ。お前にはそれが合ってると思う。」

言葉は少ないが、師匠は私の意思を汲んでくれていたのだと思う。

そして、私の洋服人生の第一章が終わり、次のステージに進んでいく。

先日とあるブランドのショップオープンのレセプションでたまたま師匠にお会いした。

10年ぶりにお会いして挨拶をし、今の近況などを話すことが出来た。

私のことも覚えていてくれて光栄だった。

また次は仕事で会えればいいなと思っている。