2020/08/15 21:27

自分で洋服作りを始めた私であったが、相変らずセレクトショップには毎週のように通っていた。

そこのショップの店員さんとは洋服の話をする程の仲になっていた。

東京に買い付けに行っている話、ビックメゾンのコレクションの話など、洋服にまつわる話をたくさんした。

こんなにワクワクする世界があるのかと、話を聞くたびに思っていた。

そして洋服の世界への憧れは、矢沢あい先生の「Paradise Kiss」や「ご近所物語」を読むことでますます加速していった。

(当時ものすごく流行っていて、漫画だけでなくアニメ化されたり映画化されたりしていた。男の私でも読むくらい人気の作品なのだ。)

主人公たちが奮闘しながら、成功していく世界に自分もすっかり入り込み、「キラキラした洋服の世界で働きたい!」と思うようになっていた。

普段の汗にまみれて溶接作業をしている現実からの逃避だったのだろう・・・

こんな単純な理由から、私は洋服の専門学校に行くことを決意した。

最初は大阪の学校や東京の学校など色々な学校を見ていたが、「Paradise Kiss」の登場人物が文化服装学院に通っている設定だったのが決め手になり、

文化服装学院を受験することにした。(なんて単純なんだ!!!!!)

田舎の家の長男に生まれた私が東京に行くことは容易いことではなかった。

初めて親に「洋服の専門学校に行きたい」と話した時は認めてもらえなかった。

単純にお金や長男であること(後継)の問題だけでなく、何をしても続かない私の性格を見抜いてのことだったのだろう・・・。

半ばケンカの話し合いと、私の揺らがない決意に、母が「やりたいことをやったら良い」と言ってくれ、

ついに受験が決定した。(今でも洋服の専門学校に行かせてくれたことはとても感謝している。)

憧れの東京!日本で一番の街!今までの私とは決別し、新しい生活を始めよう。

そう私は決意し、受験の日を迎えた。

しかし、当時の入試の様子は正直全く覚えていない。

深夜バスで帰る前に食べた吉野家の牛丼の味でさえも覚えていないくらい、本当に緊張した。

けど何とかやったのだろう。数週間後、文化服装学院からの合格通知が届いたのだ。

ここから夢に見た東京での学校生活が始まっていく。